= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =
失われたもの番外…僕のお父さん…
= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

= = = = = = = = = =
Homeに戻る
= = = = = = = = = =


= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

僕のお父さんは若い。とっても若い…と思う。とりあえず、クラスの中に僕のお父さんより若いお父さんが居るって子は、知らない。でももちろん、お父さんが若いのには訳がある。僕のお母さんは一度離婚して、10歳近く若いお父さんと再婚した。


半年くらい前のこと……


「最近お母さん、またオシャレしてくようになったね」

「そっ、そう?」

明らかに慌てる母を見れば、小学生だって、怪しいなぁ、くらいは思う。僕は綺麗なお化粧もせずに、がむしゃらになって働いてるお母さんも、格好いいと思う。でも、毎朝楽しそうに洋服を選んで、10分早く起きてお化粧して、今日一日の仕事以外も楽しもうとしてるお母さんの方が、ずっと好きだ。

そんなお母さんは、ここ数年見てない。5年くらい前には、毎日こうして楽しそうにしてたような気がするんだけど(小さすぎてよく覚えてないんだよね)。2年くらい前まで、僕の実のお父さんとお母さんは、大喧嘩をやらかしていた。ちなみに、原因は実のお父さんの浮気で…お父さんにはお母さんの他になんと3人も恋人が居たというのだ。……お父さんはモテモテだったらしい。。。

喧嘩が収まり、離婚をして、うちは平和になった。それまで、僕は「病弱」だったらしいけど、あっという間に元気になって、ようやく「病気」の原因がストレスとゆーものだと分かった。けど、離婚後だんだんとお母さんは、自分のことに気を使わなくなっていった。今までは「カズミくんちのお母さん美人だね」と誉められて、それがすごく嬉しかったのに、離婚一年後のお母さんは、すごくやつれちゃってた(もっと大きくなってから、それは暮らしていくために仕事に打ち込まざるを得なかったらしい、ってことが分かったけど)。

そんな感じで、お母さんはボロボロになって…最近は役職が上がったとかで給料がよくなり、(パートをやめたおかげで)前よりは忙しくなくなって、土日のどちらかにゆっくりするする暇もできた。お母さんはボロボロから脱出…でも、小さいころのぼんやりした思い出のように、綺麗に輝いてるイメージはなくなっちゃったんだ。

そのお母さんが、また綺麗になっている…お母さんが大好きな僕が、嬉しくないはずがない。

「何か嬉しいことでもあったの?」

「何で?」

にこにこと誤魔化そうとしてるけど、そうはいくか。こういうときのお母さんって、嘘が下手なんだ。じーっと見てると、お母さんはちょっと困った顔をした。

「こっ、今度、おかーさんの会社での友達がみんなで遊びにくるのよ。カズミ、一緒に用意しましょーね」

楽しみね、と付け加えて笑うお母さんは、まだ誤魔化してたような気がするけど、それはそれで楽しそうだったから、僕はそれ以上聞くのをやめた。



お母さんの会社の人たちが遊びに来るときは、二人で頑張って家中をきれいにした。お母さんの張り切り方が、なんだかちょっと変な気もしたけど…とにかく頑張った。当日遊びに来たのは5人で、お母さんも入れれば6人、僕も入れて7人だった。そのうちの一人が…今の僕のお父さんになる人だった。

「おぉっ、大きくなったね〜」

5人のうち2人は夫婦で、前にも何回かあったことがある人たちだった。その人たちが、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でてそう言った。更にもう2人はカップルで、今度結婚するらしい。一人だけあぶれている男の人…だからかも知れないけど、僕はその人が一番気に入って、他の大人が盛り上がってる中、一緒に遊んでもらった。

だけど、そんな僕らを、お母さんが始終気にしていたってことくらい、僕だってちゃんと気づいたんだ。遊んでる最中に、ようやく遊んでもらってる男の人が、お母さんの恋人なんじゃないかと、なんとなく感じ始めてた。けど、その男の人が僕に取り入るために、僕と遊んでくれてるとは思えなかったんだ。…だって、僕より男の人のが、家庭用ゲーム機の某パズルゲーム対戦で大真面目に熱中してたんだもん。。。(僕に負けたのが悔しかったみたい) ちなみにこのゲームは後々、お母さんまで巻き込んで、勝ち抜き戦大会にまでなった。

「ねえ、また遊ぼうよ!」

みんなが帰るところになって、僕は玄関で靴を履いているその人の服のすそをつかみ、引っ張ってねだった。だって、楽しかったんだもん。

「はは、もちろん」

その男の人はうなずいてくれたけど、お母さんからすかさず、

「こら、カズミ。我侭言っちゃ駄目よ」

と怒る。……怒りながら、お母さんの顔がにこにこ笑ってたから、全然怖くなかったけど…。

その時、お母さんとその男の人は、一緒にいると幸せそうに見えた。だから、僕は何度もお母さんにまたあの男の人が来ないかとせがんだ。だって、幸せなお母さんを見たかったから。その男の人が遊びに来てくれるたびに、遊びに来てくれる回数が重なるたびに、男の人が帰っていった家はがらんと寂しく感じだ。だから、僕はぽつりとお母さんに言った。

「あの人が、お父さんになってくれないかな…」

そうだったなら、どんなにいいだろう。この寂しさも、妙に広く感じる家の中も、その男の人が入るために用意されているのかもしれない。お母さんは、長いこと黙った後、小さい声で、

「お母さんも、そう思ってるんだけどね…」

独り言みたいな声だった。それが、お母さんが自分の気持ちとその男の人との関係を、話してくれた一番最初だった。僕とお母さんの望みは、近いうちに叶うことになる…。



僕がお父さんになる人を知った、約半年後…そして…



結婚式も無い。新婚旅行もない。ただ、3人で熱海の温泉に1泊2日の小旅行をした。それは、幸せな日常の始まりであり、そう遠くない未来にある哀しい出来事の辛さの原因でもあった。幸せで、満ち足りて、楽しくて…喧嘩しても腹を立てることがあっても、それでも、僕たちは幸せだった。若すぎるお父さんと、まるでお父さんと年の離れた兄弟のような僕…そして、お父さんと一回りくらい年が違うのに、それでも結婚してから5年は若返った気がするお母さん。
日曜日には、3人で買い物に行く。今までお母さんが運転していた車の運転席には、お父さんが納まった。…お父さんの方が、お母さんより運転が上手だったので、僕は内心ほっとした。学校で父兄参観があれば、お父さんはちゃんと来てくれた。みんなはお兄さん居たっけ? って聞いてきたけど、僕は自信を持って答えた。

「僕の新しいお父さんなんだよ」

みんなは、色々言いたいことがあったみたいだけど、僕の幸せそうな笑顔はそれらを押さえ込む効果があるってこと、もう知ってるんだ。だって、担任の先生にお母さんが再婚した話しをした時も、そうだったんだから。でも、僕は小学校の間はお母さんの旧姓で通すことにしてた。だって、もう既に離婚の時に、元お父さんの名字からお母さんの旧姓に変わってたから、これ以上は混乱を避けたかったんだ。もう小学校も残り少なかったし。

夜は時々、3人並んでダブルベッドで寝た。ちょっと窮屈だったけど、楽しかった。





僕には、自慢のお父さんが居る。近所では、お母さんが若すぎる男の人と結婚したことを、良く思ってない人も居るみたいだった。けど、そんなのはどうでも良かったんだ。だって、お父さんは格好良かったし、僕はお父さんのことが大好きだった。それになによりも、お母さんはお父さんのことが大好きで、それでみんな幸せだったんだから。

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

後書きもどき。

失われたもの、番外編です。結局、主人公の名前は出てきません。。。(←……)
本編で書ききれなかった、カツミの思いを少しでも書きたくて、この短編を書きました。
何故、カツミがあんなにもお父さんになつくのか。
それはお母さんへの想いがあってこそ、だったと思うのです。

ゲイが結婚の代わりに養子縁組する、というBLの話が時々あります。
でも、この話は反対。元々親子。そこから、共通の「大切な人」の想いから、相手への思いに変化していきます。
そーいうのも、いーじゃん。とか、思ったのですよ。

= = = = = = = = = =
Homeに戻る
= = = = = = = = = =