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失われた者 6
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翌朝の目覚めも爽快だった。カズミにおはようのキスをされて目覚めたせいもあるかもしれない。しゃっきりした気分で会社へと向かう。行く途中、ふと昨日女の人が居た場所を見てしまった。
………居ない。
朝のラッシュで行き交う人は皆急いでいるように見え、止まっている人は少ない。皆疲れた顔をしつつも活き活きとしているのは、もうすぐ連休に入るせいだろう。
人の気持ちは本当に変わりやすくて、最初楽しみだった連休が一転して嫌だったはずの昨日。またまた気持ちは逆転して、今は早くお盆休みがくればいいと思っている。自分の気持ちながら、都合のイイことだ。
有給もくっつけて今年のお盆休みは計6日、ほぼ1週間。復活してきた俺に職場仲間も安心したらしく、迷惑をかけたことを謝ってから、溜めてしまっていた仕事をバリバリと片付け始めた。
全て一通りの仕事が片付いたのは大分遅くなってから。夕食を先に食べて寝ていいということを、電話でカズミに連絡していたので、立ち上がって伸びをすると、仕事場を痕にする。
帰途途中、ファーストフードで夕食を済ませる。ふと、メニューのデザートが目に入った。女の子が喜びそうな可愛らしい飾り付けした写真が載っている。まず浮かんだのは、カズミの喜ぶ顔だった。
気がつけば、一種類ずつ4個、そのデザートを買っていた。テイクアウトで、と。店内でハンバーガーを齧る間は、冷蔵庫に入れておいて貰って、買えるときに紙袋を受け取ると、家へと向かって歩き出した。
寝ていいといっていたのに、カズミは起きていた。朝寝坊するせいで眠くないからかもしれない。ドアが開く音に敏感に反応して玄関まで迎えに来てくれる。何時もならバタバタ走って、下に響くから走るなと注意するところだが、体が本調子じゃないだめかゆっくりと歩いてきた。その手に紙袋を乗せてやる。
「おみやげ」
近くにあるファーストフード店の紙袋をしげしげと見てから、答えを求めるように見上げてくるカズミに、そう言う。早速がさがさとその場で開けたカズミの顔が明るくなるのを見逃さなかった。
「ぁ…お菓子だ」
デザート、とかスイーツ、という言葉は使わずにお菓子というあたりが子供っぽい。
「食べていいぞ」
横を通り抜けるときに髪をぽふ、と撫でながら言うと、ホントに? とカズミは俺を更に通り越してリビングへと行ってしまった。
シャワーを浴びる前にリビングを覗くと、早速食べていた。
「………太るぞ」
ぼそっと呟いて浴室へ歩き出したら、
「育ち盛りですー」
という可愛くない答えが背中へ返ってきた。
結局、シャワーを浴びた後に俺もひとつカズミから分けてもらった。久しぶりに甘い物を食べた気がする。彼女がいたときは、しょっちゅう食べていたような記憶があるんだが…。
下だけパジャマを着て、上はバスタオルをひっかけた格好のまま、自分の分を平らげてしまうと、隣でカズミが最後の一つに取り掛かろうとしている。横から、カズミのデザートの上に付いていたチョコレートスティックを取ったら、断固として抗議がきた。曰く、
「それ、僕のっ! 横暴だよ、お父さんっ」
ということだった。
ふと、思いつきが頭をよぎる。スティックの片端を口に軽くくわえると、すぃ、とカズミへ顔を近づける。
「ぇっ……」
言葉に詰まっているのが分かる。ひょぃ、とスティックの片端をゆらして、小さく「早くしないと溶けるぞ」と言えば、意を決したように唾を飲み込んでいるのが俺にも分かる。
そっと、カズミの顔が近づいてきて…もう片方のスティックの片端を口に含むのが至近距離でぼやける。目は不安そうにこちらをうかがっているのが分かる。
……気付いた時には、顎に手を添え引き寄せ、チョコレートごと、唇を奪っていた。
「――!」
びくっとカズミの身体が震え、退くのが分かるが、逃がさなかった。唇を覆って軽く吸い上げ、そっと舌先で舐めるようにして割ろうとしたら、びっくりしたようで勢いよく突き飛ばされた。
「お、おとうさ……」
真っ赤な顔をして、自分の口を抑えている。怖いものでも見るような、でもそれから離れられない断固とした興味を秘めた表情。俺がなぜ突然キスをしたのかが分からないのだろう。突然、だった。ぽろり、と。涙が零れるのが目に入る。
驚くのはこっちの番だった……さっと頭が冷えていく。
「ご、ごめん…悪かった。もうしないから……」
慌てて取り繕うように言って立ち上がり、寝室へと向かおうとする…。背後でだっという音がしたかと思ったら、背中からどんっとカズミが抱きついてきた。
「いっちゃわないで!!」
「……あ」
「どっかいっちゃやだ!」
ぎゅっと必死で抱きついてくる小さな存在を振り返れば、切羽詰ったような顔で見上げてくる目と視線が絡む。
「ごめん…突然あんなことして……」
キスが、泣くほど嫌だったのだろう。謝りながら抱きしめると、そっと髪を撫でてやる。
「ちっ、違う! 嫌じゃないから…違うから」
首を何度も振って、頭を背中に押し付けようとしてくる。
「だって、泣いてるじゃないか……」
顔をあげさせて、目元にたまった涙をすくってやりながら、申し訳ない気持ち一杯で俺はそう言った。
「………………ぅ」
しばらく黙ってしまうのを、じっと待つ。待った結果、小さく唸るような声をカズミが発する。優しく、ん? と促すと、睨むようにして見上げて、
「ぅ…嬉しかったの!」
投げつけるような言葉が返ってきた。
カズミが泣き止むのをまって、ぽんぽん、と背中をたたいてあやしてやっているうちに、だんだん静まってきたようだった。泣き濡れた顔で俺を覗き込んできた。正直、どきっとする。……あまりにも、魅力的すぎて。
「ねぇ、お父さん。あの……」
悩むように口篭もって、逡巡したようだったが。すぐに続きが紡がれる。
「お願いが、あるんだけど」
「何?」
「……聞いてくれる?」
「俺に出来ることなら、何でも」
思わず、言ってしまった台詞だった。何しろ、後ろめたいことや罪悪感が沢山ありすぎたものだから。
「ホントにホント? 絶対だよ?」
念押ししてくるのを見れば、しまった、という思いが頭を占める。けれど、口は勝手に「あぁ」などと答えてしまっていた。
「抱いて……」
耳を、疑った。
あれほどまで、怖い嫌な思いをさせてしまったというのに…。
驚いて言葉を失っていたら、たちまちのうちにカズミの目に不安が揺れ始めた。
「だ、だめ…? もう、駄目……?」
こころなしか、カズミが俺の服を掴んでくる手の力が強まる。
「……だめ、じゃない……」
何とか、それだけ言うと、じっと見つめ返し……しばらく悩むように口を閉じては開きを繰り返した後、
「いいのか? あんな、酷いことしたのに……」
「いい!」
間髪入れない答えだった。
「お父さんと居ると、安心するから…酷くしてもいいから……」
「さわって…」
小さな、小さな声。
それに促されて、手を伸ばしカズミの身体をぎこちなく抱きしめる。前と変わらず温かく受け入れてくれる、小さな身体。この存在に、俺はどれだけ救われたか……。
大切に、大切に。優しく抱きたい。今となっては、酷くするつもりなど毛頭なかった。
背へ回した腕を、服の裾から侵入させ、直接素肌を味わう。しっとりと吸い付いてくる肌はまだ未熟で、幼さを残している。けれど、その柔らかさは彼女のものではない。カズミのものだ。
ようやく、それをきちんと区別することが出来るようになっていた。そして、カズミという存在に、ひどく胸が高鳴るのを自覚したのも…このときが始めだっただろう。
「っ、お父さん……」
俺の背に回されたカズミの腕が、何かを掴もうとして背を引っ掻くのが分かる。うわずった声は、俺の腕が素肌を丹念に…しつこいほどに辿っていくせいなのか、そのもどかしい刺激に、何かを訴えるように見上げてくる。
「どぅしたの?」
「……意地悪っ」
優しく見返したら、鋭く叫ぶようにして、俺の肩口へと顔を薄めるのを見下ろし、普段焦らしすぎていたことを、今更少しだけ…ほんの少しだけ、後悔した。
「ごめん」
耳元で謝罪を囁き、耳を食むが、それの中身がこもっていないせいか、耳への刺激に息を飲んだせいか、答えは返ってこない。耳朶に軽く歯を立てれば、必死で声を殺しているのが耳元で分かる。快感に逆らうようなその仕草が、腰に響いてくる。気がついたら、性急な動作でカズミの服を脱がせ始めていた。
「はぁ…ん……」
敏感になった肌が、時折ひっかかる手や布地に息を荒くさせる。……と、カズミが俺の下しか履いていないパジャマに手を伸ばし、脱がせようとしてきた。そこには既に、相手を見ていることによって起こった興奮により、膨らみが出来ている。
「お風呂の時みたいに…」
その言葉だけで、素肌を求められていることが分かってしまったのは、何故だろうか。自分の服は脱がせてくれる手に任せ、カズミを全裸にすると、自分は脱ぎかけのズボンが膝にひっかかっているまま、カズミを強く抱きしめた。
邪魔なパジャマをそこへ脱ぎ捨て居ると、カズミの身体を掬うようにして抱きかかえる。向かった先は寝室だ。
「んっ…ぁあ……」
カズミの口から、高い声が漏れていく。口に前を咥え込みながら、指で柔らかくゆっくりと、奥を解していた。両方から与えられるものに、声を抑えるのも忘れて、その愉楽の中に浸りきっている表情。
気だるく続く、果てしない快感に口の中のものが、幾度か震えて射精を訴えてくる。けれどあくまで優しい愛撫は達することを許さず、未だ口内にてその存在を張り詰めさせていた。
「ゃあだぁ…お父さ、んん……」
時折、抗議の声が聞こえるが、まだ中が柔らかくなっていない、と答え、更なる甘い快楽の中へと身体をいざなう。
中は既に柔らかく絡みつくようになっていたが、前回酷く傷つけてしまった記憶が、鮮明に甦っては、なおしつこく指を奥へ蕩かせていた。もういいだろうか…と思って僅か顔を上げれば、ぷっくりと立ち上がって朱に染まる、乳首が見えた。
先ほど、舌先と指でもって、丁寧にいじりまわした結果、ひどく敏感になってしまったそこは、布がすれただけで反応を返すまでになってしまっている。今も身体が熱に浮かされるたびに、その赤みを強調している。
その胸飾りを遊んでいた時も、幾度となくもっと、とせがまれていたのを思い出す。そして、ようやく俺はカズミの中心より顔を上げた。
「ぁ、もぅ…おと、さぁん」
顔を上げた俺に腕を伸ばしてきて、ぎゅっと抱きついてこようとする。それを受け止めれば、間で擦れた先ほどの胸元が、擦れて一際高い声が間近で響く。
「んあぅ…」
しばらく身体を擦り合わせ、そこに刺激を送っているが、その間俺自身もカズミの身体に触れ、大きさを誇張していく。ただでさせ、カズミの姿を見て興奮しているのに、新たな刺激を黙って流せるほど、出来ていなかった。
カズミの足を開かせ、解した蕾を露にする。溶けてひくつく入り口に、俺のものを押し当てれば、ひくんとカズミの喉が息を飲み込むのが分かった。その表情が誘うようで、身体が勝手に動いて、その凶器を推し進めていた。
「……っあぁぁ…!!」
カズミの身体が腕の中で弓なりに反り、その大きさとそれに伴って押し寄せてくる、かすかな痛みと……そして甘く鋭い刺激に、一際高く鳴き声を上げる。そして、俺の身体へと勢い良く白いものを履き散らかした。
「はぁ…んく…っは、ぁ……」
入れられただけで達してしまった身体は、やはり焦らしすぎていたらしい。余韻に浸る暇もなく、ひくひくと内部を収縮させ、前は衰えることを知らないようだった。
「あぁ、もう……」
尾を引く嬌声が耳に絡み付いてくる。それがどうしても離れなくて、馴染む前だった内壁を、ぐっと押すようにして腰を動かし始めていた。
「ふぁ…ん、んんぅ……」
達した直後だからか、それともその急な動きにか、寄せられる眉が悩ましくて、ちゅ、と唇を寄せれば、辛そうに閉じられていた瞳がうっすらと空いて、見つめてきて…荒くつらそうな呼吸を無視して、唇を僅かすぼめる。
その、慣れていないことが分かる、キスの強請り方すら、愛しく、そして欲情のきっかけにすらなる。誘われるまま口付け、柔らかく幾度も啄ばめば、腕の中の身体が、ふっと力を抜くのが分かった。
それにあわせ、腰をゆっくりと引いては押し進めを繰り返したら、内部か絡みついてきて、一層快感を奪おうというように、締め付けてくる。
「んぅ、ふ…うぅんっ……」
唇をなぞり、歯列をたどって内部へと舌を滑らせれば、くちゅ、という音を立てて、舌が控えめに絡み付いてきた。それを吸うようにして口内を楽しめば、次第に息が続かなくなって、呼気を求め離れていこうとする。
空気を貪っているのを見ながら、腰の動きを次第に大きくしていけば、追いつかなくなったか肩を大きく揺らして息を求めて……それを塞ぎたい衝動に駆られながら、唇を舐めとることで許して解放した。
「おと、さん…もっと――」
そして、その声に誘われるまま、押し付ける腰の強さを強めていった。
「ねぇ、お父さん」
「…起きたのか」
おはよう、と抱きついてくる身体は、まだ昨夜の情事の後をまざまざと見せ付けてくる。それに挨拶を返せば、胸の中でごろごろと甘えてきた。
「ずっと、一緒だよね…?」
「カズミが離れていかなければな」
ぎゅぅっと力を込めて、腕の中の存在を抱きしめれば、ぐぇ、と苦しそうな声が聞こえた。苦しそうに暴れているのを押さえつけるのに疲れ、ぱっと解放したら、首に食いつくようにして、腕を回してくる。
「…だったら、大丈夫だね」
嬉しそうに響く声が、耳元に……。
今でも、その声はそこに残っている。そして、思い出すたびに、その時と同じくにやけるような、嬉しさからくる笑みを、俺は浮かべるのだ。
もう悩むことは少ないだろう。俺の半済は、失われた彼女ではなく、もう既にカズミのものになっていたのだから。何時か俺が先に朽ち果てるまで、一緒に時を歩む。
たとえそれが、親子の道からずれていたとしても…カズミがそれを認めてくれれば、他は何もいらないと、言うことが出来る。
少しでも悩んだ時に思い出されるのは、あの時の女の子…否、女の人だ。女の人の現在は知らない。ただ、カズミに残される哀しみを味あわせることになるのではないか、という思いに囚われるたび、俺の記憶に女の人のもう朧気になった顔が、甦る。
俺は、カズミから先に旅立つ幸せを…最後まで幸福だったという、その幸せの形を、受け取ることが出来るのだろうか…。
End。。。
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